全国一斉特設電話相談
シニアの悩み110番 実施報告

 

 開設要綱


・開催日時    平成28年3月26日(土)・27日(日)  10:00〜17:00

・場  所     東京・名古屋・大阪・福山・広島・福岡

・相談員     シニアライフアドバイザー

・主  催     全国シニアライフアドバイザー協会

 

 相談受付状況


        相談者数の表

今回の相談者は127人でした。

男性32人、女性95人。平成6年に「シニアの悩み110番」を開設して以来、女性の割合が圧倒的に多い状況が続いています。

今回は、6都市(東京・名古屋・大阪・福山・広島・福岡)で受け付けた相談件数のうち、54.3%が大阪でした。

相談の内容は、大半が男女に共通した悩みやトラブルですが、男性の場合、厳しい状況に置かれたとき、何とかしたいという 責任感の裏返しで、一人で抱え込んでしまい、公的機関にも家族や友人など身近な人にも、なかなか相談ができなくて 孤立しがちです。顔が見えない電話相談は、そうした男性たちの本音が言える相談先としての役割も担っています。

女性の場合は、多くの人が自分のことだけでなく、家族のことも自分自身のこととして思い悩んでいる場合が多いです。  その一方で、一人で苦労を背負い込んだり、親や夫の介護に明け暮れる日々に疲れ、生きがいがほしい、息抜きがしたいと打ち  明ける人もいます。

「シニアの悩み110番」の相談員は、シニア問題に詳しいシニアライフアドバイザーが務めています。重い問題を抱えている人は もとより、法律や制度の基本的なことが分からないので教えてほしい人、あちらこちらに相談しても答えが見つからず、 なんとか解決の糸口を見つけたい人、答えは要らない、とにかく話を聞いてほしい人など、さまざまな人たちからの相談 を受けています。

 

 年齢区分別検証


        年齢別表

70歳代 ~不安や悩みが今までよりも負担に感じる~

元気に暮らしていた人たちも、多かれ少なかれ健康に不安を感じ、体力にも 自信がなくなる年代です。

今までそれほど負担に思わなかった親の介護が大変になり、「妻が介護疲れで うつ状態になっている」と妻を気づかう夫や「親の介護が重荷に感じるようになった。いつまで続くかと思うとやりきれない」 と訴える電話がありました。

一方、「国民年金と働いていた時のわずかな貯金で暮らしている。まだ健康で 働きたいが働き口がない」「長期治療の家族がいる。貯金も少なくなり、先行きの生活費が心配」など、経済的な不安を訴 える相談も寄せられました。

障害を持つ子供の親の不安は、この年代になると一層募ります。

娘が人格障害で20年あまり治療を続けている夫婦は、「60代までは何とか 頑張ってきたが、最近は体力が低下し、気弱にもなった。娘の将来が心配」と訴えています。

また、10年間、ひきこもりが続いている息子を持つ男性から、「どうしていい かわからないまま年月が過ぎてしまった。70歳を過ぎ、このままではいけないと思いはじめた。どこに相談に行けばいいか」 との相談がありました。

60歳代 ~積極的に解決したいという姿勢がみられる~

親の介護や相続など、身の回りにはじめて経験することが起こり、戸惑っている 人たちからの相談が寄せられました。高齢期に入ったとはいえ、まだ体力も気力も十分にあり、相談の様子にも、積極的に 現状を把握して、解決をしようという姿勢が見られます。

隣人とのトラブルや、地域活動のもめごとに、傷ついたり、腹を立てたり、 悩んだりして、対処方法の相談があるのは、この年代が多いです。

また、第2の人生を迎え、夫との暮らしを清算し、自分の人生をもう一度やり直 したいと熟年離婚を考えるのもこの年代ですが、今回はそのような相談はありませんでした。

それとは別に、「夫が不倫をしている。別れるつもりはないが、なんとかしたい 」という相談や、「今は働いているが、退職後のことを考えると寂しい。婚活というわけではないが、茶飲み友達がほしい」 と出会いを求める女性の電話がありました。

80歳代 ~今のうちにできることはやっておきたい~

今回は90歳代の相談者はありませんでしたが、毎回、80歳以上の相談者が占め る割合が微増しており、今回もその傾向は続いています。

人生の終末にあたり、今のうちにできることはやっておきたいと考えている人が多くいます。

「田舎の代々ある土地を処分しておきたい」「財産を生前贈与したい」「相続税 がどれくらいか試算したい」などの相談が寄せられ、年齢は高くても、理路整然と説明するしっかりした声に超高齢社会を 実感します。

また、「重度障害の息子がいる。もしものことがあっても困らないようにでき るだけのことはしてあるが心残りだ」「15年前にけんか別れをして以来音信不通となってしまった息子に会いたい」という 訴えに、子を思う切ない親心がうかがえました。

 

 相談内容検証


        相談内容表

相談内容の全国6都市の合計1位は「遺言相続」ですが、全相談件数の半数あまりを受け付けた大阪では「経済」が1位でした。

また、男性の相談件数の1位は、「遺産相続」と「経済」、女性は「家族親族」でした。
「シニアの悩み110番」は、相談の内容を一つのテーマに絞らず、シニアが抱える悩みや不安全般にわたって受け付けています。
相談内容は、一つの項目だけにとどまらず、多くの場合、多岐にわたっています。

遺言相続 ~自分の遺産は自分の思い通りに分割したい~

近来、自分の遺産は自分の思い通りに分割をしたいと考える人が多くなりました。

「一人の甥だけに相続をさせたい。法定相続人は3人いるが、どうしたらいいか」
これは、80代の女性からの相談ですが、この他にも、
「配偶者に、全部相続させたい」
「法定相続人ではないが、世話になっている人に財産を譲りたい」
「夫の遺産を先妻の子に現金を多く渡し、実子には、将来、自分の面倒を見るという条件で家を相続させたい」
など、いろいろなケースがありました。

一方、毎回必ず寄せられる相談に不公平な遺産分割によるトラブルがあります。

今回も「親の遺産分けをするときになって、妹が夫と一人娘を親と養子縁組させていたのが 分かった」という二人姉妹の姉からの相談をはじめ、相続が原因で、兄弟間でもめていたり、不信感を持ったり、 疎遠になっているケースの相談がありました。

健康医療 ~病気の治療と仕事の両立~

「がんになり、退職をした。まだ抗ガン剤治療中だが、ハローワークで仕事を探しても見つから ない」
60代の男性からの相談です。

最近は、病気、特にがん治療と仕事の両立を支援する動きがありますが、この男性のように退職を するケースも稀ではありません。治療が一段落して病状がある程度安定すると、働く力が回復します。生活費や生きがいの ために、再就職を希望するようになりますが、高齢者の場合、いったん退職すると再就職は厳しいです。

この他、毎回寄せられる悩みとして、「配偶者が認知症かもしれない」「手術が必要になったが 保証人がいない」「病気がちだが、少ない年金暮らしで医療費が捻出できない」などの相談がありました。

家族親族 ~親に頼って暮らす子供、少ない収入で親の面倒を見る子供~

いくつになっても親に頼って暮らしている子供がいます。子供といっても、既に中年といえる年齢 です。自分の部屋に引きこもり、終日パソコンを相手に過ごしている息子、まともに働いていない男性と暮らし、生活費を無 心に来る娘、高齢の親たちは、家計のひっ迫と将来の不安に心が休まりません。

反対に、親の介護にかかる費用の不足分を少ない収入からやりくりしている子供や、中には孫が 祖父母の介護にかかる費用の一部を負担している事例もありました。

また、「遠隔地で一人暮らしをしている父親を行政がどのような支援をしてくれるか知りたい」 との問合せがありました。自分の生活や仕事と、遠隔地の親のサポートとの両立はなかなか大変です。相談者のように、 介護が始まる前から早めに情報を集めて、前もって準備することも遠距離介護をスムーズに行うポイントの一つです。

他に、子供と絶縁状態のため、冠婚葬祭の連絡ができない人、息子に、面倒を見る代わりに、財産 を全部渡すように迫られている親など、親子関係もさまざまです。

その他の気になる相談

・高齢者のネットやスマホのトラブル

「携帯を紛失して届け出た。帰宅後、書類を見たら、他の会社へ契約変更をされていた」

「ネット付きマンションを購入したが、ネットがつながらない」

・隣人のトラブル

「夜間、隣室のテレビの音が気になって眠れない。援助員さんに言ったら自分で言ってください と言われた」

・悪徳業者・結婚詐欺

「家を建てる契約で住宅会社に手付金500万円を支払った直後に、預り金500万円を請求され払い込 んだ。その後、おかしいと気づき連絡したところ、既に倒産していた。業者は破産宣告をしており、民事訴訟をしたが返金は 不可能」

「結婚相談所で知り合った女性に金銭をだましとられた」

・認知症が疑われる相談者

「介護事業所の人間が夫を誘拐した」

 

 暮らしの形態別検証


        暮らしの形態の表

「一人世帯」 ~保証人がいない~

ひとり暮らしの人から、毎回、受ける相談として、入院や転居時に保証人がいない悩みがあります。

「身内がいない」「子供がいるが音信不通」「親戚はあるが世話をかけたくない」など、事情はい ろいろですが、この電話相談でも開設以来、解決に苦慮している課題の一つです。

民間で身元保証をする会社もありますが、許認可の必要がない事業のために信頼できない場合もあ り、実際に、今回の相談でも、公益法人にもかかわらず破たんした「日本ライフ協会」に入会していた60代後半の男性から 次のような相談が来ました。

「ひとり身なので老後の入院や老人ホーム入所に備えて、日本ライフ協会に入会した。内閣府の 監督下にある公益財団法人なので信用していた。どのような対処をすればいいか」

この相談者のように、「公益財団法人」ということで信頼を寄せて、申し込んだ高齢者も少なくな いと聞いています。高齢者にとって油断ができない世の中です。

「夫婦世帯」 ~夫に悩みや不満がある妻~

夫への悩みや不満を訴える妻からの相談が目立ちました。

70代以上の妻は、病気の夫の老老介護や、無年金の夫に代わって働かなくてはならないため、体力 が限界でこれ以上頑張れないと訴えています。

また、「夫が一日に8回も食事をとり、怒りっぽくなった。病院に連れて行きたいが行ってくれない 」や「夫の物忘れが急にひどくなった。病院に行った方がいいか」といった認知症を心配する電話がありました。

一方、60歳代の妻からは、夫の浮気やDVの悩みの相談が寄せられました。

夫婦で暮らす世帯の男性からの相談はいつも少数ですが、今回も次の1件だけでした。

「長年のうつ病で、意欲が低下して何もやりたくない。妻が病気に理解がなく、話を聞いてくれない」

「家族同居世帯」 ~同居している家族の介護~

親が高齢になり、介護が必要になった場合、元気な同居家族がいると、原則として介護保険の訪問援助サービスは受けられません。

「姑の介護のためにパートを辞めた。夫は私が出かけると嫌味を言うので、気晴らしもできない」

「90歳の父親の介護をしている。弟がいるが協力がない。頑固な親なのでストレスがたまり、疲れがひどい」

など、家族の介護を一人で引き受けている人たちからの相談がありました。

夫の理解や兄弟の協力も必要ですが、同居の場合でも、事情に応じて身体的な介護援助も利用でき るので、ケアマネジャーに相談して、負担を軽減する方策を見つけることも必要です。

 

 

【社 会 提 言】


~求められる適切な福祉サービスの利用促進~

高齢者貧困を止の立場に立ったわかり易いPRを

「シニアの悩み110番」には、様々な悩みを抱える高齢者たちが情報を求めて電話をかけてきます。

「3年前にこの地方へ転居した。以前、暮らしていた地方では、いろいろな趣味の会があり、講演会 にも参加ができた。ここではそのような機会がない。情報があれば教えてほしい」

関東から九州に引っ越した80代の独居男性からの相談です。

自分が住んでいる地域の情報を知りたいという同じような相談は、全国6都市で開設している、 どの地域の「シニアの悩み110番」にも寄せられます。

全国の自治体には、高齢者が住み慣れた地域で安心していきいきとした生活ができるように、 健康を維持したり、生きがいをもって生活をするための支援やサービス、制度などが用意され、高齢者の社会参加の推進を 通して生きがいや介護予防につなげる取組みをしています。

これらの情報は、役所や自治体が定期的に発行する広報誌、新聞、テレビやラジオの広報番組を通 して案内をしています。相談窓口も細かく設けられています。

しかし、どのようなサービスがあり、どこに行き、どのようにすれば利用できるかなど、利用者側に 必要な情報がしっかり届いていません。

「シニアの悩み110番」に寄せられる相談には、それらの情報を知っていれば解決につながる相談も 多くあり、情報が溢れる現代社会の中で、せっかくの施策が活かされていないことを実感し、残念に思います。

内閣府の日常生活の情報に関する満足度の調査で、「不満である」「やや不満である」と答えた人 に対する、どのような点が不満かという設問に、「どの情報が信頼できるかわからない」「必要な情報が乏しい」 「情報の内容がわかりにくい」「どこから情報を得たらよいかわからな い」「字が小さくて読めない」などの項目が上がっ ています。

(内閣府 平成26年度高齢者の日常生活に関する意識調査結果)

http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h26/sougou/gaiyo/index.html

高齢者の一人一人が求める情報が余すことなく行きわたり、実際に利用できるように、利用者の立 場に立って、より利用しやすい仕組みを整えるとともに、情報提供のあり方を改善する創意工夫のなお一層の努力が望まれます。 そのことが、医療や介護が増加し続ける超高齢社会の中で、高齢者の社会参加を促し、ひいては介護予防へとつながります。

「シニアの悩み110番」も、高齢者が生き生きと生きがいを持って暮らすための情報を提供する ツールとして、引き続き相談活動の充実を図っていく所存です。

 

【参 考】

*シニアライフアドバイザー(SLA)

シニアライフアドバイザー(SLA)とは、人生90年の時代、定年退職後や子育て終了後に迎えるシニアライフを健康でいきいきと 生きがいをもって豊かに生きられるように、家族関係、生きがい、福祉、介護など、中高年齢者の生活全般にわたって相談 にのったり、アドバイスをしたりする専門家です。

シニアライフアドバイザーの資格は、(財)シニアルネサンス財団(1992年設立、内閣府主管  URL:http://www.sla.or.jp)の「シニアライフアドバイザー養成講座」を修了 し、その資格審査に合格後に授与されます。

全国には、2,600名のシニアライフアドバイザー(SLA)がいます。(2010年10月現在)

*全国シニアライフアドバイザー協会

全国7都市にあるシニアライフアドバイザー協会が、全国一斉特設電話相談「シニアの悩み110番」 開設などの活動を、連携をとって実施するために設立された組織です。

全国7都市のシニアライフアドバイザー協会は次のとおりです。

東北シニアライフアドバイザー協会(仙台)

NPO法人関東シニアライフアドバイザー協会(東京)

中部シニアライフアドバイザー協会(名古屋)

関西シニアライフアドバイザー協会(大阪)

東中国シニアライフアドバイザー協会(福山)

NPO法人中国シニアライフアドバイザー協会(広島)

九州シニアライフアドバイザー協会(福岡)

 

*中部シニアライフアドバイザー協会

中部地区在住のシニアライフアドバイザー(SLA)で構成している組織です。定年退職をしたり 子育て終えた後に迎えるセカンドライフを、生き生きと生きがいを持って暮らすために、セミナーや講演会を開いたり、 また、電話相談をはじめとする相談活動を開設して、同じセカンドライフを歩いているものの立場から、アドバイスをする という活動を、おもにボランティアで行っています。

中部シニアライフアドバイザー協会 URL: http://chubusla.web.fc2.com/

 

【資料編】


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全国シニアライフアドバイザー協会
中部シニアライフアドバイザー協会

HOME

inserted by FC2 system