全国一斉特設電話相談
シニアの悩み110番 実施報告

 

開設要綱


 

・開催日時     平成27年3月28日(土)・29日(日)  10:00〜17:00

・場  所     札幌・東京・名古屋・大阪・福山・広島・福岡  計7都市(仙台不参加)

・相談員     シニアライフアドバイザー

・主  催       全国シニアライフアドバイザー協会 

相談者数・相談者の内訳


 

相談者数    560人                            (資料‐1、2、3、5、6,7,8,9)

       

相談者数検証

 

              〜〜男性からも多岐の分野に相談が寄せられた〜〜  

 年々、男性の相談者が増える傾向にあり、一昨年9月開設の電話相談からは30%台を占めるようになりましたが、今回は23.8%に留まりました。

 男性は今まではどちらかといえば家族よりは自身の健康や経済に関しての相談が大部分を占めていましたが、今回は遺言相続、家族親族、経済、成年後見等、多岐にわたり、万遍なく相談がありました。

 今や家庭のことを妻や家族に任せておけない、自らが積極的関わって解決しなければならない時代を迎えていると感じているようです。

 男性は自分が亡くなった後、妻が金銭面でやっていけるのかを心配しています。また高齢になるにしたがって相続で家族に迷惑をかけたくないという思いが強くなっていると感じました。

 女性の場合もやはり遺言相続の相談が多く、親子や親族との関係の悪化が起因していて遺産を法定通りに渡したくないという相談が毎回あります。

 介護に関しては最近では家族全体で関わる傾向にありますが、それでも女性の負担は大きいです。

 子供のいない夫婦は入院や施設入所の際、保証人がいないのでどうしたらよいか不安を抱いています。

 その他、男女とも一人になったとき死後の後始末を心配して、最期を託せる生前契約のできるところはあるかという問い合わせが増え、ますます人間関係が希薄になっている状況が伺えます。

 

年齢区分別相談者数


    年齢別区分による順位                                 (資料‐3、6,7)

    

年齢区分別検証

               〜同じ相続の相談でも年代の間で内容に違いが見られる〜  

 

 年齢区分別による相談件数の順位は、数字を見る限り、60歳代・70歳代・80歳代とも1位「遺産相続」、2位「家族親族」で同じです。

 しかしながら、相談の内容は年齢区分ごとに明らかな違いが見られます。

 相談件数1位の「遺産相続」では、60歳代の相談では、多くの場合、親の遺産分割の兄弟間の不公平による揉め事が目立ちます。70歳代では、親の相続に加えて、自分自身の相続を考えるようになります。子のない夫婦、なさぬ仲の子を持つ夫や妻からの相談が多くなるのはこの年代です。80歳代は相続で迷惑をかけたくないという思いから、これは特に男性に多いのですが、家屋敷を残す場合の相続税を心配したり、世話をかけている長男の嫁や相続権のない親戚に、気持ちだけでも遺贈したいと考え、その方法を尋ねたりする相談がありました。

 なお、少数ですが、90歳代の人からも相談が寄せられました。90歳を超えても、情報を正しくキャッチして、活用したいと考え、前向きに生きている人に勇気づけられます。 

1位 70歳代 〜貧困に苦しむ高齢者たち〜

 人によって差はあっても、肉体的にも精神的にも多少の老いを意識する年代です。そうした状況下で、悩みのタネは尽きませんが、中でも経済的な困窮を訴える相談が多くありました。

 自分は病弱で治療費がかかるので認知症が進んだ親を施設に預けるまでの費用を捻出することができない。家賃が高く、生活費に事欠いているのに、保証人がいないため安い住居に転居できない。暴力をふるう息子を精神病院に入れる費用が払えない等々、高齢者の貧困が深刻な状況にあることが窺い知れる相談ばかりでした。

2位 60歳代 〜悩みや不安の解決に向けてエネルギーが感じられる〜 

 この年代の人達は、高度経済成長期に青年期を過ごすなど、今までとは異なったライフスタイルを持っています。体力的には、まだ十分動ける人が多いので、今まで歩いてきた道を振り返り、これからの人生をもっと生きがいのあるものにしたいと願い、「生き方」についての相談が多数寄せられるのはこの年代の特徴です。

 今ならやり直せるとの思いから、熟年離婚を考える人、子供が独立してほっとしたのもつかの間、離婚して子供を連れて戻ってきたと嘆く人、第2の人生を迎え、老後の生活に経済的な不安を感じている人、悩みの種類は様々ですが、何とか頑張りたいという解決に向けてのエネルギーは感じることができます。

3位 80歳代 〜しっかりした相談者が多いが、認知症と疑われる人も〜 

 遺産相続の相談が多く寄せられましたが、相談の内容を理路整然と説明し、相談員のアドバイスにもしっかりと受け答えをしています。潜在的ニーズに比べて利用者数が低いと言われている成年後見制度についても、積極的に知ろうという心意気が感じられました。

 一方、ほとんどの都市の電話相談で、この年代の相談者を筆頭に、店の店員が自分が万引きしないか監視している。孫に爪切りや下着を盗まれる。向かいの家の主人が自分をストーカーしている等、認知症を疑われる人の相談が増えていて、電話というツールを使っての対応の限界を感じ、心が傷むことがあります。

相談内容 


                                      (資料‐1、2、3、4、5、6、8)

    相談内容順位(上位5項目・412件で73.6%)

             

    

 

相談内容検証

 

1位 遺言相続      〜相続させたくない人にも分割しなくてはいけないのか〜 

 今年1月に相続税法が変更になったので確認の電話が多かったです。相続した後の資産運用方法の相談もありました。全体に相続に関する基本的な知識や正しい情報を得ていれば解決できると思われる相談を、聞きかじりの知識や不確実な情報に翻弄されて悩んでいるケースも目立ちました。情報のアンテナが少なくなった高齢者にとって、重要な情報を正確にキャッチすることの難しさを痛感しています。

 また、遺言書通りに相続した後に不満をもつ家族がいる場合が多いです。遺言書を書くときは配分の理由や感謝の言葉を添えることができます。法律上の効力はありませんが、揉め事を避ける効果はあります。

2位 家族親族    〜子供がいても〜 

 子供がいても遠くに居住している。同じ敷地内に住んでいても交流がない。結婚後、夫婦共に会いに来ない等、子供を当てにできない家族が多く、終末期も死後のことも自ら準備する状況になっています。もちろん子供に面倒をかけたくないので最期を託せる生前契約の機関を教えてほしいという相談もあります。自分たちは老親を最後までみたが、自分の子供には望めない風潮になっているのが現状です。家族制度が崩壊した現代では「最期の最後まで自分の思うように人生を閉じることができる時代になった」と考えるのがよいのかもしれません。

3位 健康医療    〜認知症の家族に翻弄されている〜 

 認知症関連の相談が増えています。夫の様子がおかしい、認知症かもしれない。夫がアルツハイマー病で暴力を奮うので自殺を考えている。80歳の姉が一人暮らしで介護サービスを受けているが認知症が進み心配している等、自分も高齢になり面倒をみきれなくなり困り果てている状況にまさしく超高齢社会を感じます。

4位 経済      〜年金が少なくて生活ができない 

 年金額が少なすぎて生活できない人からの悲痛な相談が少なくありません。家賃が年金より高い。年金と子供からの仕送りで暮らしているが、親戚のお悔やみにも行けず情けない。有料老人ホームの一方的な値上げに困っている人もいます。

年齢に関係なく50歳代からも生活苦を訴えてきています。

2億円の相続税は幾らかと聞いてくる人がいる一方で、一か月の年金額が2万5千円という人もいて、経済格差をひしひしと感じました。

5位 介護福祉    〜介護保険制度は深刻な人に届いていない〜 

・近所の人が自分を邪見に扱う、警察や市役所に相談に行っても聞き入れてくれない。 

・自分の姿を盗撮されていて気味がわるい、警察に行っても取り合ってくれない。

この2件はいずれも一人暮らし世帯からの電話です。一人暮らしで精神的に病んでいたり、認知症であると思われる深刻なケースには介護保険制度は届いていません。この問題も地域社会、家族制度の崩壊が絡んでいます。孤立高齢者を放置しないためにも「介護保険制度」の周知が超高齢社会の最大課題と強く思います。   

「暮らしの形態別」相談内容


                                                   (資料‐2、8、9)

「夫婦世帯」、「一人世帯」、「家族同居世帯」の暮らし方で相談内容の相違を検証しました。

 

暮らしの形態別相談人数 

           

 

暮らしの形態別相談内容検証

 

「夫婦世帯」   〜「パワーハラスメント」で離婚を考えている〜

 子供がいない夫婦からの相談では、自分の遺産はすべてを配偶者に相続させたいと考えています。残された配偶者の生活を考えてのことですが、一方で、感情的な理由で、親や兄弟など他の法定相続人には分けたくないと思っている人もいます。

また、夫婦に子供はいないが、先妻に子供がいるケース、妻に連れ子や里子に出した先夫の子がいるケース、内縁関係にある夫婦のケースなど、同じ子供がいない夫婦でも、さまざまなケースの相談がありました。

夫の「パワーハラスメント」で離婚を考えている相談が2件ありました。

 ・夫の言葉による暴力がひどい。昔はこんな人ではなかった。一緒に暮らしたくない。

 ・定年後、言葉だけでなく、手が出るようになった夫と離婚したい。

「一人世帯」   〜判断能力が衰える前に契約できる「任意後見制度」〜

   成年後見制度の利用者数は、13年末の時点で17万6564人にのぼり、高齢社会の中で、その必要性がますます高まっています。

 一人暮らしの高齢者は、今は健康で生活に困っていなくても、もしも自分が認知症になったらどうしようかと、先行きに不安を抱えて暮らしています。今回の電話相談でも、元気な高齢者から、本人の判断能力が衰える前から契約を結ぶことができる「任意後見制度」について、次のような問い合わせが寄せられました。

・病気や認知症になった時の財産管理について制度を詳しく知りたい

・将来、老人ホームの入所手続の代行をしてくれる後見人を頼みたい

・相続手続きで成年後見制度を利用するにはどこへ相談すればいいか

 また、転居や入院の際に保証人がいないという相談はいつもながら多いですが、それとは反対に、保証人を頼まれた側から、子供の時に自分を捨てた母親が今になって病気で入院するので保証人になってくれと言われて断わったが、これでよかったか迷っているという複雑な心の内を訴える電話や弟のアパートの保証人をしているが、弟が働かず自分が家賃を払わなければならない。保証人をやめたいという相談がありました。

「家族同居世帯」 〜自立しない息子と暮らす高齢の親〜

 家族のかたちが変わっています。 65歳以上の高齢者がいる世帯で3世代同居の家族は少数派となり、親と未婚の子のみの世帯が増加しています。

 電話相談にも、息子と暮らす高齢の母親から、フリーターの息子と暮らしているが、金銭感覚がなく、自分の財産を使い果たされてしまいそう。夫がなくなり、結婚しない息子と暮らしているが、仕事をしない。49歳の息子が精神疾患で通院中。金遣いが荒く、こちらがストレスで体調を崩した等、自立をしない我が子を嘆く相談が後を絶ちません。

 障がいを持つ子供と暮らす親は、自分の死後、この子がどうなるのかと訴えています。

 また、高齢の母親の世話になっている60歳代の全盲の男性は、いつまでも頼るわけにはいかないと先行きを心配しています。

 子が親を介護しきれなくなった時、ヘルパーを頼みたくても親が家に他人が入ることを拒んだり、施設に入れたくても承知しなかったり、せっかくの制度を利用できないケースが見られました。 

 



【社 会 提 言】


   【1】 男性介護者を支える社会サポートが必至

 親や妻を介護している男性からの相談が少しずつ増えています。

 母親を兄弟で介護しているが、認知症が進んで大変になったので施設に入れたい。妹と2人兄妹、90代の母親をヘルパーやデイサービスを利用して介護しているが、妹が全く協力しないので、せめて経済的な援助だけでもさせたい等、全国各地の男性から相談があります。

 少し前までは男性の介護者は、自分が介護者であることを人に言えないまま一人でがんばっていました。今や、介護者の3割が男性と言われる時代となって自らSOS発信をし始めました。ここにきて電話相談も男性介護者にとって一つの情報を得るツールとして利用されるようになったと推察します。

 介護は男女を問わず大変なことですが、往々にして男性は一人で抱え込む傾向が強く、周りに相談したり、弱音を吐くことも稀にしかありません。これが虐待の要因の一つとなっています。

 今年2月に札幌で起きた介護に疲れた夫が妻を絞殺した事件は記憶に新しいですが、今回の相談にも、92歳の母親の介護をしている弟が暴力をふるう。風呂を熱くして入れなくしたり、暖房器具を使えなくしたりしている。母親は弟に殺されるかもしれないという相談が離れて暮らす姉から寄せられました。

 この相談の場合、たまに来る家族にはわからないことも多々あると推察できるので、相談者の訴えを鵜呑みにするわけにはいきませんが、残念なことに、「介護保険制度」を利用していませんでした。もし活用していればヘルパーやケアマネジャーのサポートを受けて、自分一人で抱え込むことはなく、自分の思いをも察してくれる人がいることで、状況はかなり変わったのではないかと思います。

「介護保険」は「国民健康保険」と同様「国民皆保険」であるにも関わらず周知の点で健康保険に大きく溝をあけられています。

「介護」は社会でケアし、「心」は家族でケアすることで介護する人も、される人も安心して自分らしい社会生活を営むことができると信じます。

 介護は、長引けば長引くほど、病人の健康状態も悪化し、介護する側の負担も増え、疲労やストレスがたまるのは事実です。まして、男性は家事になれていませんし、近隣とのつながりもなく孤立しているので、更に大きな負担がストレスにつながります。

 マスコミでも、制度をはじめ自治体等の取り組みを広く広報していただきたいと強く願います。 政府もあらゆる媒体を使って「公報」をお願いしたいです。

【2】 情報弱者への情報提供のお願い

 新聞に難病のことが書いてあった。詳しくはホームページで見ることができると書いてあったが、ホームページとは何か。

 電話相談にかかってきた80歳代の男性からの問い合わせです。インターネットを使えない高齢者は多くいますが、更に、ホームページが何かを知らない高齢者がいます。

 インターネット上に公開されている情報には、高齢者にとっても有益な多くの情報が掲載されていますが、大半の高齢者がそれを知ることができないでいます。

 「シニアの悩み110番」の利用者は、新聞・テレビ・ラジオから万遍なく情報を得て電話をかけてきます。

 「新聞で見たので切り抜いておいた」「テレビを見ながらお昼を食べていたら流れた」「ラジオの深夜放送で聞いた」

 利用経路はそれぞれですが、高齢者は情報を手に入れることを望んでいます。新聞・テレビ・ラジオからの高齢者にとって大切な情報が全国津々浦々へ届きますように願ってやみません。

【参考】    

*財団法人シニアルネサンス財団

   (財)シニア ルネサンス財団のホームページ http://www.sla.or.jp をご覧ください。

 

*シニアライフアドバイザー(SLA)

  (財)シニアルネサンス財団(1992年設立、内閣府主管)が中高年齢者総合生活相談員の養成事業におけるシニアライフアドバイザー養成講座を修了し、その資格審査に合格した者です。

 シニアライフアドバイザー(SLA)は人生90年時代、定年退職後・子育て終了後に迎えるシニアライフを健康で経済的困難がなく、かつ不安やトラブルもなく、生き甲斐をもって幸せに生きられるようにアドバイスしたり、シニアと共に問題解決を図ることをモットーとしてボランティア活動を行っています。

 全国には、2,600名のシニアライフアドバイザー(SLA)がいます。(2010年10月現在)

 

*中部シニアライフアドバイザー協会

    中部地区在住のシニアライフアドバイザー(SLA)で構成している組織です。

 定年退職をしたり子育て終えた後に迎えるセカンドライフを、生き生きと生きがいを持って暮らすために、セミナーや講演会を開いたり、また、電話相談をはじめとする相談活動を開設して、同じセカンドライフを歩いているものの立場から、アドバイスをするという活動を、おもにボランティアで行っています。

        中部シニアライフアドバイザー協会 URL:http://chubusla.web.fc2.com/

 

*全国シニアライフアドバイザー協会

    全国8都市にあるシニアライフアドバイザー協会が、全国一斉特設電話相談「シニアの悩み110番」開設などの活動を、連携をとって実施するために設立された組織です。 

  全国8都市のシニアライフアドバイザー協会は次のとおりです。

      北海道シニアライフアドバイザー協会(札幌)

      東北シニアライフアドバイザー協会(仙台)

      NPO法人関東シニアライフアドバイザー協会(東京)

      中部シニアライフアドバイザー協会(名古屋)

      関西シニアライフアドバイザー協会(大阪)

      東中国シニアライフアドバイザー協会(福山)

      NPO法人中国シニアライフアドバイザー協会(広島)

      九州シニアライフアドバイザー協会(福岡)

 




【資料編】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全国シニアライフアドバイザー協会
中部シニアライフアドバイザー協会

  

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